本当は怖い昔話

(霜月九日)

 子供向けに図書館でよく絵本を借りてくる。だいたいは今どき(?)の絵本が多いのだが、日本の昔話も読ませたいなと思い、ときどき混ぜている。

 この年になって改めて昔話を読んでみると、案外その中身を知らなかったり、忘れていたりすることが多いことが分かる。「むかしむかし…」から「めでたしめでたし」まで、物語をほぼ完全に言えるのは、桃太郎くらいだったりするのだ。

 んでもって、けっこうえぐい記述が少なくないことに気づく。
 平たく言うと、人が死んだり、殺されたりする話が、思いのほか多いのだ。

 たとえば「おむすびころりん」。「良い」おじいさんが、おむすびを落としてしまい、それがねずみの穴に入って、ねずみたちの恩返しを受けるというお話だが、そのあと「悪い」おじいさんが出てきて、ねずみたちの小判を奪おうと悪さをする。

 絵本によって終わり方は少しずつ違うようだが、今回うちで借りてきた本では、ねずみの穴の中で迷い込んで、息が詰まって死んでしまうことになっている。

 さらに「かちかちやま」。これはすごい。かちかちやまといえば、うさぎがたぬきを懲らしめる話。泥舟に乗ったたぬきが最後に沈んでしまうオチはなんとなく記憶にあったのだが、問題は物語の最初だ。

 畑で悪さをするたぬきを、おじいさんが捕まえて、たぬき鍋にしてやるといって家に吊るしておく。ところがずるがしこいたぬきは、反省したふりをして、おばあさんを騙して、縄を解かせる。ここまではよいとして、そのあと、たぬきはおばあさんを殺して、なおかつばばあ鍋にして食ってしまうのだ。

 キョーレツ!

 ノンタンやトーマスではありえない展開だ。そのほか今どき(?)の絵本や、子供向けのほがらかとしたアニメでも、およそ考えられない展開であり、描写だろう。

 でも逆に考えると、それが良いのだと思う。

 子供って、案外残酷なことが好きだ。でも、人が死ぬってどういうことなのか、よく分かってはいない。昔話がときに残酷なのは、昔の貧しくて困窮していた庶民の生活を反映しているからだというような解説を読んだような記憶があるが、かつてはもっと「死」が人の身近にあり、その怖さや辛さを子供たちに教える手段として、昔話があったのではないかと思う。

 現実世界は、うさぎさんもたぬきさんもねずみさんも、みんな優しくて楽しくて、仲良くお喋りをしたりお菓子を食べて遊びましたとさ、とは決してならない。事故に遭うこともあれば、病気になることもある。運が悪いと死んでしまうこともある。殺人事件のようなこともある。

 そういったことから目を背けて、誰も死なない、誰も傷つかない、「無毒な」絵本やアニメばかりを与え続けるほうが、実はよっぽど怖いことなんじゃなかろうか。

 昔話の絵本の中にも、殺すんじゃなく、ただ怪我させる程度に、描写を弱めてしまっているものもあるけど、むしろそういう「優しさ」の風潮が怖い。 
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